冬におすすめのハーブのひとつがバラ科の“ビワ”。
今回は、和ハーブインストラクター半谷美野子さんにご自身の経験をもとに"ビワの葉"についてお話いただきました。
ビワといえば果物ですが、和ハーブ※として注目したいのは葉と種。生薬名はビワヨウ(枇杷葉)といい、民間薬としては種子も活用されています。葉はお茶やチンキ、温湿布にしたり、濃く煮だして入浴剤や染め物にも使ったりと、活用用途がいっぱい!何からご紹介すればいいかわからないほど、カラダにいい効果があると言われているビワですが、まずは歴史からご紹介していきたいと思います。
*和ハーブとは、一般社団法人 和ハーブ協会 https://wa-herb.com/waherb3/waherb3/
では、「和ハーブ」を「在来種(日本原産)、あるいは江戸時代以前より日本に広く自生している有用植物」と定義しています。
ビワの歴史
・三千年の歴史
ビワは中国の古い仏典「涅槃経」の中に登場し、「ビワの木には、枝や葉、根、茎すべてに大きな薬効があるので、病気の人は手で触れたり、香りを嘆いだり、舌でなめることによって、すべての病苦を治す。」「生きとし生きるものの万病を治す植物」といわれ、“大薬王樹”と書かれているそうです。
・日本には仏教と共に伝来
さて、ビワは古くからありますが日本在来の植物ではなく、奈良時代に仏教とともに原産国の中国から伝来したといわれ、“正倉院文書”にもビワについて記載されています。
江戸時代に流行ったのが、「琵琶葉湯」。ビワの葉に7種類の生薬を配合した暑気払いの飲み物で、重宝されたそうです。
私の実家にはビワの木が植えてあって、小さい頃から実を食べ、ビワの葉茶を飲んで育ったのですが、「ビワを庭に植えるのは縁起が悪いので、本当は植えない方がいいといわれているんだけどね。」と母や祖母から聞いていました。でもこの話、実は江戸時代の琵琶葉湯売りが自分の商売のために、「ビワの木を植えると病人が出る」などと流布したという説があることを知り、我が家の庭にはビワを植えています。
ビワの葉の採取について
さて、なぜ冬におすすめなのか?という理由のひとつがビワの葉は一年中採取し、活用できるのですが、一説に大寒の時季の葉の薬効が高いといわれているため。染め物も冬の葉で染めたものの色が一番濃いそうです。
私は冬にゴワゴワして、濃い緑色で一年以上はたっている古そうな葉をまとめて摘み取ります。よく洗って、お茶や入浴剤にしたり、化粧水や虫刺され用に生のままホワイトリカーにつけてエキスを抽出してチンキ*にして保存しています。チンキの作り方は、後ほど、、、
また、11月末~1月頃に咲く花に出会うのも採取時の楽しみのひとつ。白い花はかわいらしく、なんともいえない上品な香り。冬の寒さから身を守るために毛に覆われた丸い蕾も、虫たちのご馳走になる蜜を蓄えた花も是非みなさんに見ていただきたいです。
ビワの花
ビワの葉染めとビワの葉採取
ビワの葉の薬効
・風邪の時に
ビワの葉は抗炎症作用や抗菌作用が高く、咳を鎮めたり、痰を除いたり、胃を丈夫にするなど、冬の風邪にありがちな症状を鎮める効能が色々あるのも冬にビワが活躍する理由のひとつ。
我が家では風邪をひいたら、ビワの葉を煮出したビワ茶*をまめに飲み、喉が痛い時はお茶やチンキでうがいをします。漢方処方だと「辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)」に配合され、鼻づまりの解消や鼻の炎症を鎮めるために用いられるそうです。
ビワの葉茶は、一晩おくと赤色に。染色するときも、一晩おくとキレイな色に染まります。
・お風呂に
また煎じ液やチンキは様々な美肌にもよいといわれていますが、浴用としても使えるのです。とても寒い飛騨に住む友人から「色々な薬草をお風呂に入れてきたけれど、ビワの葉を煮出したら、身体が芯から温まってよく眠れるので、冬にビワの葉は欠かせない」と聞き、試してみたら、身体がポッカポカに!手浴や足浴にもおすすめです。
・ビワの葉蒟蒻温湿布
傷み・かゆみ・炎症を抑える効果がある“アミグダリン”の含有量が多いのもビワの葉の特徴。生の葉のツルツルの面を気になる症状の場所にに当てたり、チンキや煎じ液をつけてる方法で救われた方が沢山いらっしゃいます。
特に冬、冷えなどが辛い時や風邪をひきそうな時に、試していただきたいのが、ビワの葉蒟蒻温湿布。
生のビワの葉の表面を、温めたいところに当て、その上から熱々に茹でた蒟蒻をタオルに二重に包んであてるだけ。(風邪のひきはじめには、「風門」というツボを温めるとよいそうです。)実際、蒟蒻が冷える頃には嘘のように楽になっていることが何度もありました。
ビワの葉 こんにゃく温湿布
まだまだビワの葉に関しては様々な身体にいいことがあり、書ききれませんが、無農薬のビワの木が身近にあれば、活用して頂けたらうれしいです。ビワの葉で身体を温め、癒し、免疫力をアップし、寒い冬を元気に乗り越えましょう!
注意:種子もチンキにするなど、色々活用できますが、2017年に高濃度のシアン化合物が含まれたビワの種子の粉末が発見されたため、農林水産省から「ビワの種子の粉末は食べないようにしましょう」注意勧告がされ、サイト(https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/foodpoisoning/naturaltoxin/loquat_kernels.html)にも記載されています。ビワの種を摂取する際は量など重々気をつけてください。
◆参考文献
「和ハーブ図鑑」:古谷暢基/平川美鶴 《一般社団法人和ハーブ協会》
「体と心がよみがえる ビワの葉自然療法」:望月研 著 東城百合子 監修
「食べる薬草事典 春夏秋冬・身近な草木75種」 村上光太郎 著
◆参考サイト
「養命酒」https://www.yomeishu.co.jp/genkigenki/crudem/140528/index.html
「イー・薬草・ドット・コム」
https://www.yomeishu.co.jp/genkigenki/crudem/140528/index.html
「wikipedia」https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%93%E3%83%AF
「三砂堂漢方」https://www.misagodo.com/biwa/yakuri.html
「公益社団法人東京生薬協会」
https://www.tokyo-shoyaku.com/wakan.php?id=207
*びわの葉茶の作り方
- 布巾などでさっと拭いたあと、裏側に毛が生えているので、歯ブラシやたわしなどで毛をこすって落とす。
- スポンジなどでよく洗う。
- 風通しのよい、軒下などで、カラカラになるまでよく乾かす。
- 2cmぐらいの幅に切るか、ミルなどで細かくして、お茶やだしパックに入れる。
- .飲む時は1~5ℓ程度の水にパックを入れ、沸騰してから10分ほど弱火にして煮出す。さらに10分ほど蒸らすと色もしっかりと出て、ほのかに甘い香りがするびわの葉茶の出来上がり。
*ビワの葉エキスの作り方
1年以上たった濃い緑色で肉厚のビワの葉を採取し、タワシや使い終わったハブラシで両面をよく洗って水気が切れるまで乾かした後、2~3センチ幅に切ります。(タワシで洗う際、葉の裏側にある綿毛をできるだけきれいに取って下さい。濁りの原因やのどや肌に毛がついた時に不快になることがあります。)
- ビンに、葉っぱ:ホワイトリカー(焼酎やウォッカ)を1:9ぐらいの割合で入れます。(今回は180ml瓶に3枚程)
- 3~4週間したら葉の上下を入れ替えます。入れ替え作業を行う時、葉と葉の間の空気を抜き、葉が浮いてこないようにするのがポイント。葉が外気に触れているとカビの発生することがあるので注意!
- あとは冬場で4ヶ月、夏場で3ヶ月ほど置けば出来上がり。
- 成分が安定し、葉の色がすっかり茶色になったら葉を取り出します。
濁りが気になる場合は、紙製のコーヒーフィルターなどで濾すときれいになります。 - ビワの果実や種子も同様にして漬けることができます。
※ホワイトリカーの代わりに消毒用エタノールでも作れますが、口に含んだり飲んだりもできないので、ご家庭で作るにはホワイトリカーなどがおすすめ。
*ホワイトリカーや焼酎は35度~45度ぐらいがおすすめ。脂溶性の成分、水溶性の水分、どちらも抽出されます。
【使い方】
- マスクに染み込ませてつかうと、咳や喉の痛み、花粉症にも効果あるといわれています。
- うがい薬として用いてもOK(アルコールが強すぎる場合には、適宜水で薄めて使用。)
- 化粧水は容器に、3~5%のグリセリンやBGと5%ほどのビワの葉エキスを容器に入れ、精製水や芳香蒸留水、アロマオイルを入れて作成。
半谷美野子
「人と自然をつなげる、伝える」ことがライフワーク。愛する自然を後世に残すため、多くの方に身近な自然の素晴らしさ、大切さを知って頂きたいという思いから、植物や生き物について五感を通してワクワクするワークショップを主に愛知、岐阜で開催。あいち健康の森薬草園にも勤務。
森林インストラクター、JAAアロマコーディネーター、和ハーブインストラクター
造園施工管理士、ビオトープ施工管理士、学芸員