仏生山の旅 ~前編/お風呂編~

仏生山の旅 ~前編/お風呂編~


心の故郷をもつ事。

何かの占いで、私は心の故郷、心の帰る場所を強く必要とするタイプであると出たことがあります。
疲れた時、傷ついた時、生活の中がストレスやマイナスなイメージで充満してしまった時。

眠ったり、食べたり、本を読んだり、お風呂に入ったり
解消する術は人それぞれありますが、私は好きな土地へ行く、がかなり上位の方法だとその時意識しました。

コロナ禍で自由に外出もままならないストレスフルな日々が続く中、いろんな思いを抱えながら私はある土地に足を向けました。

香川県高松市仏生山町

香川県高松市仏生山町

小さな香川県のほぼ中心に位置する3㎢にもみたない小さな町です。

江戸時代は門前町として栄え、大正時代以降、高松琴平電気鉄道株式会社、通称「ことでん」の車両基地のある駅として賑わいました。

しかし廃線や市町村合併のあおりを受け徐々に街は静かに、寂しくなっていきました。

しかし戦争の影響をさほど受けず、江戸時代から続く商家を中心とした街並みが至る所に健在する仏生山町です。

近年、古き良き日本の風景を見させてくれるこの街は、創業200年以上変わらず作り続ける醸造所や、古民家をリノベーションしたカフェなど、新しいものと古いものが融合した街は、味わい深く心地よい場所です。

2010年から3年おきに開催する【瀬戸内国際芸術祭】の影響もあり、ふらりとあてもなく散策するに最適な街として人気が出ています。

今回はその仏生山町の中でも特に注目されている場所【仏生山温泉天平湯】にお邪魔してきました。

仏生山温泉天平湯

仏生山温泉天平湯

温泉とは思えないモダンな外観。こちらが仏生山温泉天平湯です。

泉質はナトリウム炭酸水素塩・塩化物泉、かつては美人の湯と呼ばれた重曹泉です。

炭酸の泡を消さないように、極めて低め(30℃以下)に設定された露天風呂が人気で、ぬるぬるツルツルとした湯触りで肌に優しいお湯です。丁寧に整備された中庭を眺めながら、季節を問わずゆったり長湯ができます。

ぬるいお風呂だけでなく、45℃近い熱いお風呂から、42℃38℃と段階があり、サウナのようにお風呂で温冷交代浴ができるのも嬉しい所です。

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仏生山温泉のモダンでお洒落な館内は、長い廊下に沿って、琉球畳やローテーブル、低いベンチが外に向かって設置されており、館内の人の動きを気にすることなく、ゆったりくつろげます。

低く設定されたローテーブルには、お土産物や県内の美術館やアートイベントのチラシが充実し、視線が自然と下へ、そのまま座り込んでじっくり見てしまいます。重力を強く感じる休憩スペースです。

50mの仏生山小書店と呼ばれる古本コーナーは、仏生山の古い街並みに触発され、ついつい難しくても読んでしまいたくなる、明治〜昭和初期の小説が充実しています。

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全体的にホワイトキューブ、現代美術のギャラリーのように白く四角く平坦な建物の内装に、シンプルなロゴのあしらわれた、ハッキリと目の引く赤と青の暖簾も、懐かしくも新しい。

天井には剥き出しの配管が走り、全て隠すでも曝け出すでもなく金属質の天井が隙間を持ちながら並び、間接照明の光が無機質な冷たさを洗礼された美しいもののように浮かび上がらせます。

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黒い外壁で囲われた中庭を眺めながら食事をとれる食堂で、この日は黒蜜のカキ氷をいただきました。

ゴロゴロと白玉が隠れたフワフワの氷に黒蜜は自分でかけるスタイル。

もう少し暖かくなると、地元産のキウイを使用した自家製シロップが1番人気です。

うどん県だけあってメニューはうどんが多め。

どのメニューもいりこ出汁が効いてすっきりとした味わいです。

うどん県 香川県 うどんのメニュー

どの時間帯も若い方は目立ちますが、地元のお年寄りは当然多く、お客様の年齢層や客層のバラつきは他の温浴施設より広く感じます。

街に突如現れたお洒落な空間で、芸術祭帰りのいかにも!な若者達と、地元の方が等しくくつろぐ姿は、最初はちょっとした違和感すら感じました。

しかしその違和感は一瞬で、不思議なほどに融和する古いものと新しいもの。
それこそがこの温泉の魅力、この街の魅力ではないかと気付きました。


古くから栄えた街を、町おこしなどを目的ににそっくり作り替えるわけではなく、

街道が残り、街並みが残り、祭りが続き、それを魅力に感じ、支えてきた人達の中に自然と生まれた新しい場所。

街自体が無理な変革を求めず、住んでいる人達が少しずつ成長するように、生まれた変化の一つである場所。


雨の少ない香川県の街の真ん中にじわりと湧いて出た温泉。

一見異様なこの事態は、待っていたかのように美しく新しい外観を伴い、すっと街と人に溶け込みました。

まるで木が伸びるように、古い年輪を残し新しい枝を生やしていく街、仏生山町。

穏やかに成長する街の、新しいシンボルとなった温泉の紹介でした。
後編は、そんな仏生山に"根付く"ことをテーマとした新しいスポットの紹介をいたします。

仏生山温泉


筆者:澤田摩耶 現代美術家
澤田摩耶 現代美術 画家

香川県出身 日常の中に変化が生まれる瞬間の閃きを油彩で描く。
岐阜県各務原市に移住し、恵みの湯WEBスタッフとして在籍中。
ハーブやサウナのある暮らしに心酔し、口を開けばサウナイキタイ!
公式Instagram https://www.instagram.com/maya_s_kaitano/

 

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