仏生山の旅 ~後編/ 植物編~

仏生山の旅 ~後編/ 植物編~

仏生山の森をたずねて

香川県高松市の中心に位置する、古いものと新しい物が心地良く交わる町「仏生山(ぶっしょうざん)」。その仏生山で近年街にも県外からの観光者にも愛される温泉について、前回はご紹介いたしました。
前編はこちら
https://yuyu-sousou.com/blogs/column/20210521_kagawa_onsen

ゆったりとした時間の流れる、現代的でお洒落な館内。とろりとした湯ざわりの肌に優しいお風呂は、どこからでも丁寧に整備された中庭を眺められ、ついつい長湯をしてしまいます。
仏生山温泉 モダン 建築 香川県 高松市

今日のお話しは、そんな仏生山温泉から車で約5分。静かな門前町からちょっと外れた、のどかな田舎の風景の真ん中にできた新しい場所。 最近四国の友達のSNSでよく見かける場所、カフェなのか、植物園なのか、動物もいる?「仏生山の森」のご紹介です。
仏生山の森 エントランス
仏生山の森 菜の花畑
「仏生山の森」は"仏生山の街に根付く"ことをテーマとした自然や食事の体験が出来る場簡単に言うとレストランとカフェとBBQテラスとケーキ屋さんと料理教室と植物園の楽しめる小さな複合施設です。

『「仏生山の森」の中には、さまざまな憩いの場があります。そして、そこに完成形はありません自然のままに、移りゆく季節と人々の暮らしに合わせながら、心地よく変化していきます。』
HPより(https://busshozan-no-mori.com/)

香川県産の野菜やお肉を使った料理、お砂糖などの素材にこだわったスイーツ、それらを訪れた仲間たちと楽しめるBBQ…SNS上では食事の充実さに注目がいきますが、私が感動したのは「仏生山の森ガーデン」です。
仏生山の森 ガーデン 植物と暮らす
100年続く自然」をテーマにした静かなお庭。ガーデニングでは珍しい、造園に使われている植物の95%が宿根草、多年草を用いているそうです。

偶然この広いガーデンを作り上げた高橋彌生(たかはしやよい)さんにお会いすることができ、お話を聞くことができました。
造園管理 ガーデン作り

3000株もの植物を植え、それぞれがそれぞれの適した季節に、最適な状態で観られるようにするのはとても大変なこと。

 毎日のお手入れとしっかりした知識、あとは様子を見て理解できる目。植物は可愛いでしょう。それぞれ得意な時期と場所があって、それを知ってあげて、良い時に良く見えるように生かしてあげないと!」

 まるで子どもの成長を楽しむように語る高橋さん。19歳の時から植物について学び、50歳から本格的なガーデナーになられた、半世紀も人と同様に植物に愛情を向けてきた方です。
宿根草 多年草 ガーデナー 100年続く自然

「仏生山の森」全体のテーマである「街に根付く」事と、昨今の庭つくりの流行である宿根草に共通点を得て、「100年先も変化しながら強く美しく街に愛される庭にしていこう。」と3年前に始まったガーデン作り。

 3年目にしてようやく最初に植えたものから根が広がり、強く良い状態で咲くようになってきてくれたそうです。

暖かい香川県といえどもまだ3月の寒い時に訪れたので、周りの畑には菜の花が咲き誇っていましたが、青々とした芝生や新緑には遠い頃。にもかかわらず、ガーデンには多種多様の美しい緑や花が咲き誇っていました。

ガーデンの草木花 植物のある生活
寒い時には背が低くて葉の強い植物が、暖かくなってくると大きな花をつけるものが目立ちだし華やかに。夏には背の高いグラスが風になびいて美しく、秋には木々の紅葉のように足元の葉も色づき、冬を越すための剪定や手入れを入念にすることで、また季節が巡っていく。

そうして年々、強く広くそれぞれが根を広げ、最適な場所を自分たちで選び育っていく。 物言わぬ植物達の意思を感じ取りながら、成長の手助けをする。
「とっても大変だけど楽しいのよ。」とお話ししていただきました。

ホームページに記載されているこの言葉とガーデンは欠如していた自然のままにいきる感覚を思い出させてくれた気がしました。

それは日々のうつろいや変化を恐れず、そのままの美しさを認める事。何かをこうしなければ、自分はこうでなければ無意識のうちにありもしない完成形を求め、自分を縛り、窮屈な思いをしている事。
仏生山の森 ヤギ 植物と暮らす 自然は自然のままに

肩に力が入り、躍起になって理想や完成形を追い求める事は、人が生きる上で大切な事で、その力があるからこそ、人間はここまでの発展をしてこられた事は間違いありません。

しかし、本来人も自然の一部。生まれそして死んでいくただの生命の一つでしかありません。「未完成でいい。」植物を通してこの言葉が思い出させてくれる原始的な生き物としての人の姿。

ありのままを認め、花が咲かない時も、目に見えない土の中で根が眠っている期間も含めて愛する。感じるままに、肩の力を抜いて、生き物としての自分は何を求めているか。

ただ花や緑に癒されるだけでは終わらない、自分自身に問いかけ、気づきを得た旅でした。
香川県 高松市 仏生山の森 エントランス
仏生山の森 外壁 ハーブ
それにしても、本当に美しいお庭でした。ローズマリーって、日当たりと土の質があっていたらゴロゴロとした岩の間でも根を張って育つそうです。

育ちすぎて邪魔者扱いされがちなミントがあちこちでツヤツヤとした緑のアクセントになり、グランドカバーの多くがタイムの仲間だったり、見知ったハーブが見知らぬ姿でイキイキと育っていました。

私の働く恵みの湯にもハーブ園があります。

主に入浴剤やサウナのロウリュウに使用するために収穫を目的として整地し栽培しています。

整然と整えられた中でも、自分達で場所を選ぶように年々移動するカモミールや、去年はいなかった虫の発生など、植物は思った通りにいかないなと日々考えさせられます。

暑い日が増えてきて、最も植物が元気に育つ時期がきました。

頭を働かせるばかりの日常から少しだけ離れ、自然や植物に触れられる畑の時間。

植物の声に耳を傾け、未完成の生む変化を楽しみながら成長を見守っていきたいと思います。
各務原 恵みの農園 ハーブ農園

参考:仏生山の森 公式サイト  https://busshozan-no-mori.com/

筆者:澤田摩耶 現代美術家
澤田摩耶 現代美術 画家

香川県出身 日常の中に変化が生まれる瞬間の閃きを油彩で描く。
岐阜県各務原市に移住し、恵みの湯WEBスタッフとして在籍中。
ハーブやサウナのある暮らしに心酔し、口を開けばサウナイキタイ!
公式Instagram https://www.instagram.com/maya_s_kaitano/

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