秋風が冷たく感じられる季節になり、過ごしやすさや心地よさを感じられるようになってきました。
気温が低下していくと、なぜかもの悲しくなったりどうしても調子が上がらない日が出たり…気力の低下と共に、知らず知らずのうちにふえているのがストレスです。
根本的な解決方法があるならほしい。どうすればストレス少なく生きられるのだろうと、涼しくなってくると苦しくなってくるのは私だけでしょうか…
ストレスは生活の中で生まれてくるものですが、解決策として挙げられるものは「睡眠」「お風呂」「一人の時間」など日常をちょっとアレンジするものが中心です。
しかし、根本になる原因を取り除かない事には、その場凌ぎの解消法にしかならないず、ストレスの緩和、解消の意味を見出せない気持ちもあります。
そんなことを漠然と考える日々の中、一人の魅力的な女性に出会いました。しなやかで穏やか、常に身体のどこからもストレスを感じない自然体でありながらはっきりとした芯を感じる人、妙子セニガリエズィ(以下タエさん)さんのご紹介です。
前回私の書かせていただいたコラム
「まちといる人《未来、人間、自然=デザイン》ライフスタイルデザイナー アレさんに聞く」ではライフスタイルデザイナーのアレさんに、日々の生活をランクアップさせるデザインの考え方についてお聞きしました。
https://yuyu-sousou.com/blogs/gifu-kakamigahara/20210716_lifedesign
タエさんはアレさんの奥様で、岐阜県各務原市で自然に囲まれたおうちで生活しています。
タエさんとアレさんの出会いはオーストラリア。10年ほど前にそれぞれワーキングホリデーで同じホステルに滞在していたのがきっかけです。その後行動を共にし、生活するうちに、アレさんは民族文化や工芸品や職人技術に心を惹かれて、タエさんはそれまでもご自身がお仕事として行っていたマッサージの新しい技術を深めて行きました。
技術や知識として新しいものを吸収していく一方で、多国籍の人のあつまるホステルや、ホームステイ先での生活で、タエさんはふと違和感を覚えたそうです。
大きなきっかけはホームステイ先のシャワールーム。いつも通りシャワーを浴びて髪や体を洗って流す、日本では当然の習慣、なんならお湯も張りたいな、そんなお風呂習慣を行うと、ファミリーから「日本人は綺麗好きでお風呂が長い」という指摘が出たそうです。聞けば、そのエリアは雨が少なくタンクに貯まったお水がなくなったら終了。お風呂は最小限で、よっぽど暑くて汗をかかないと髪も毎日は洗わないそうです。
「えっ?シャワーだけなのに?」と思うと同時にタエさんが気づいたのは、いかに自分がそもそもの習慣に疑問を持たずにいたかということです。なんとなくいつもしてるから、と考えたり選択した自覚もなく、日々生活していることにちょっとした恐怖心に近いものも感じたそうです。
小さなきっかけですが、タエさんにはあらゆることに通じる大きな出来事でした。
それ以来、日々のあらゆる選択を意識するようになったそうです。
朝起きて、身支度をし、食事を取り、仕事をし、買い物をして、お風呂に入り、眠る。
何気なくすぎていく日常の中に、どれほど多くの【選択】がひそんでいて、自分達はそれを【習慣】として流してしまっているかに気付く。
そして、日常の中でストレスや不満が生まれてくるのは、この習慣化した選択の影響があり、一つ一つを見直すことで生活をもっといいものに変化させていけるのではないかと思ったそうです。
それから、タエさんは生活の中で【習慣】になっていることに直面すると「これは”今”の自分に必要か」と自分に問いかけるようになりました。
その結果、身の回りから必要ないものが減り、ゴミが減り、どんどん身軽になって、ストレス自体が消えていく感覚を得ていきました。
さらには、これまで以上に環境や気候にも目を向け流ようになり、自分にとっての心地良い暮らしのための選択が、地球環境にも良い影響を与えていけるのではと感じ始めました。
住む場所が点々と変わる生活がおわり、アレさんとともに日本に帰国し、家族となって一つのところに暮らすようになり、これまで以上に「長く物を使うこと」「ゴミや無駄なものを少なく生活すること」が重要になってきました。
タエさん達には新しい【日常の習慣】になったものの中で、私からしたら驚きで魅力的な生活のテクニックを紹介します。
まずは【蜜蝋ラップ】。古いハンカチや手ぬぐいに蜜蝋を塗ったものです。野菜や食品に触れても安心な素材で、優しく鮮度を保ってくれます。
使用後は水で洗い冷蔵庫で保管すると半年〜1年使えて、プラスチックゴミの現象に大きく貢献してくれます。
なんとなく知っていたけれど実際見せてもらうとまず可愛い!カラフルでくったりした質感が見るだけでうれしくなります。
ラップとしてお皿や野菜を包むだけでなく、公園などにいくときに持っていくと、折りたたんでお皿代わりに、しっかり漏れがないようにするとコップ代わりにもなるそうです。
「そもそもお気に入りだった古いハンカチやハギレを使用すると、大切なものを手放す悲しみがないし、お気に入りがいつまでも手元にあるのが嬉しくなる」とタエさんは言います。
次に広大なお庭に設置された【コンポスト】。タエさんの手作りで家族には「ヒッポくん」と呼ばれてペットのように可愛がられています。料理の際に出る生ゴミをヒッポくんに入れてこもった熱と微生物の働きで肥やしへと変わり、畑の土の栄養になって土に却って行きます。
タエさんと食事をした際に、料理をするところを見せていただくと、生ゴミがほとんどでないことに驚きます。過食部は無駄なく使い、わずかに出るゴミは土に返す。
洗い物の際にも、7センチ程度に細かくカットしておいたハギレで、大まかな汚れを拭き取ってから洗うことで水や洗剤もほぼ使わずにさっぱりと終わります。
美味しく料理を作れることはもちろん喜びですが、始めから終わりまで排水溝もゴミ箱もスッキリとしているのは見ていてとても気持ちがいいものです。
他にもラベンダーやミントをアルコールにつけて作ったチンキ剤で机や布巾を洗浄したり、空になったお米の袋を折り畳んでポットを作り庭の植物の種から次の苗を育てたり。
タエさんの日常が自然のものを利用した生活のアイデアで溢れています。
どれも突飛なアイデアや想像を絶するものではなくて、誰でもちょっと視点を変えたら気づくような些細で小さな工夫の積み重ねです。
これを必要か否かを自分の頭で考えて生活すること、最終的にどうある事が自分にとって心地良いかを知ること、その積み重ねで自分の人生を自分の選択で生きている実感をもつことが、生活の質を大きく向上させることになるのではないかと思いました。
素敵!やってみたい!こうするといいらしい!にそのまま乗っかるのではなく、何に魅力を感じて何に共感したか、これが自分の生活に加わる事がどういう結果になるか。
自分の生活や思想の成り立ちに目を向け、習慣を打ち砕き本当に心地良い状態に向けて目線を変えていくことが、いま私がストレスなく生活を送るためのテクニックとして有効だなと感じるきっかけとなった、一人の女性のお話でした。
タエさんInstagram https://www.instagram.com/taeko_senigalliesi
筆者:澤田摩耶 現代美術家
香川県出身 日常の中に変化が生まれる瞬間の閃きを油彩で描く。
岐阜県各務原市に移住し、恵みの湯WEBスタッフとして在籍中。
ハーブやサウナのある暮らしに心酔し、口を開けばサウナイキタイ!
公式Instagram https://www.instagram.com/maya_s_kaitano/